入れ歯安定剤の種類と特徴を徹底解説!正しい使い方で快適な入れ歯生活を

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2025/09/19

入れ歯安定剤の種類と特徴を徹底解説!正しい使い方で快適な入れ歯生活を

「せっかく作った入れ歯なのに、すぐにズレてしまって食事がしにくい…」「急に痛みが出たけれど、すぐに歯医者に行けない…」と、入れ歯の不具合にお悩みではありませんか?

そんなとき、一時的に入れ歯を安定させ、快適な生活をサポートしてくれるのが「入れ歯安定剤」です。しかし、便利だからといって安易に長期間使い続けるのは非常に危険であることをご存知でしょうか。

この記事では、あなたがより安心して入れ歯を使用できるよう、現在市販されている入れ歯安定剤の4つの種類とそれぞれの特徴、さらに知っておくべき正しい使い方や長期使用のリスクについて、詳しく解説していきます!

そもそも入れ歯安定剤とは何か!?

入れ歯安定剤の役割とメリット!

では、まず入れ歯安定剤がどのようなものかについて詳しく見ていきましょう。

入れ歯安定剤とは、入れ歯と歯茎(粘膜)との間に生じる隙間を埋めて密着させ、入れ歯の維持力や接着力を向上させるためのサポートアイテムです。

当初はぴったり合っていた入れ歯でも、長期間の使用に伴う噛み合わせの変化や顎の骨量の減少などにより、徐々にフィット感が失われる可能性があります。入れ歯が不安定になると、食事中に動いたり外れたり、粘膜に当たって痛みを感じたりといったトラブルが起こります。

このような不具合に対して入れ歯安定剤を使用すると、以下のようなメリットが期待できます。

  • 入れ歯が落ちにくくなる:歯茎としっかり密着するため、不意に外れるトラブルを防げます。
  • 食事がしやすくなる:入れ歯が安定することで、グラつきが減り、しっかり噛んで食事ができます。特に、くっつきやすい食べ物でも安心して食べられる種類が増えるでしょう。
  • 噛むときの痛みが軽減できる:安定剤がクッションとして機能し、入れ歯の床(しょう)と呼ばれる部分が歯茎に当たる痛みを和らげます。
  • 会話がスムーズになる:歯茎と入れ歯の間に空気が漏れる隙間が埋まることで、発音の妨げが軽減され、会話がしやすくなります。

このように、入れ歯安定剤は一時的に使用する分には、とても便利な物だということがわかります。

4種類を徹底比較!入れ歯安定剤のタイプ別特徴と使い方!

入れ歯安定剤には現在、大きく分けて4種類があります。ここからは、それぞれのタイプの特徴と、どのような方に向いているのかを見ていきましょう。

1. 粘着タイプ(粉末・クリーム・シート)の特徴

まずは、主に粘着作用によって入れ歯を安定させる「粘着タイプ」の3種類について説明します。これらは、歯茎と入れ歯の隙間がそれほど広くない場合に適しています。

①クリームタイプとは何か!?

クリームタイプは、入れ歯安定剤の中でも最も一般的にイメージされる、クリーム状(ペースト状)の製品です。

Q: どのような仕組みで入れ歯を安定させているのか気になりませんか?

A: クリームタイプは、唾液などの水分と混ざることで強い粘着力を発揮し、入れ歯をしっかりと安定させます。

最も注目すべきは、比較的持続時間が長く、強力な保持力を提供するという点です。総入れ歯や部分入れ歯のどちらにも使用でき、長時間安定させたい方、入れ歯と歯茎の隙間が比較的小さい方、小さな食べ物が詰まるのを防ぎたい方に向いています。

【使い方】
入れ歯をきれいに洗い、水分を拭き取って乾燥させた後、入れ歯の内側(粘膜と当たる部分)に数カ所クリームを出し、全体に薄くのばして使用します。量が多すぎると、はみ出しや不安定さの原因となります。

②粉末タイプとは何か!?

粉末タイプは、「粉でどうやって安定させるのか不思議に思われるかもしれません」。これは、粉末に水分(唾液)が混ざることで粘着性が出て、入れ歯が粘膜にくっついて安定するという仕組みです。

粉末タイプは、クリームタイプに比べると粘着力が穏やかです。そのため、短時間の使用や、クリームタイプのベタつき感や違和感が気になる方におすすめです。また、粉を薄く均一に振りかけるため、装着時の違和感が少なく、取り外しも比較的簡単という点がメリットとして挙げられます。

粉末タイプは、新しい入れ歯でなんとなく違和感を感じる場合や、軽い安定性を求める場合に最適です。

【使い方】
入れ歯をきれいに洗い、水分が残っているうちに(クリームタイプとは異なります)、入れ歯の内側(粘膜と当たる部分)に薄く均一にふりかけます。

注意点: 粉タイプは、水分を吸って密着させるため、高齢者など唾液が少ない方や、顎堤(あごの骨の土台)が平坦な方にはあまり向いていないとされています。

③シートタイプとは何か!?

シートタイプは、薄いフィルム状の安定剤で、手軽に使用でき、持ち運びやすいのが特長です。

シートを入れ歯の形に合わせてカットし、入れ歯と歯茎の間に挟んで使用します。特に、入れ歯を取り外す際に粘着残りが少ないため、手軽さを求める方に人気です。装着時の圧迫感も少なく、初めて安定剤を使う方や敏感な方にも適しています。

【使い方】
入れ歯をきれいに洗った後、水分が残っているうちに、入れ歯の内側(粘膜と当たる部分)にシートを貼り付けます。使用しているうちに唾液などで溶けていき、最後はなくなります。

従来のクリームタイプや粉末タイプと比較した優位性:
従来のクリームタイプや粉末タイプでは、使用後の清掃時に粘着剤が入れ歯や口内にこびりつきやすいという問題がありました。しかし、新しいシートタイプは、取り外しが簡単で、べたつきや不快感が少ないという点で優れています。

2. クッションタイプの特徴

次に、「クッションタイプ」(ホームリライナーとも呼ばれます)について見ていきましょう。

クッションタイプは、ゴムのような柔らかい素材でクッション性を持ち、入れ歯と歯茎(粘膜)の間の隙間が広いときや、入れ歯が当たって歯茎が痛い方に使用されます。

クッションタイプの最も大きな特徴は、クリームや粉末タイプと異なり、水に溶けないということです。そのため、食事中に入れ歯安定剤が溶け出してくる心配がなく、一度つけると洗っても2〜3日使えるものもあります。

主に総入れ歯に用いられますが、注意点として保険外の金属床(金属の入れ歯)には使用できないとされています。

【使い方】
入れ歯の内面にクッション性のある材料を貼り付けて使用し、入れ歯の安定を図ります。

タイプ 性状 特徴 適した状況 長期使用の可否
クリーム ペースト状 唾液で粘着力発揮、粘着力が強く長持ち 隙間が小さい、長時間安定させたい 短期使用推奨
粉末 粉末状 唾液で密着、粘着力は穏やかで清掃しやすい 軽い安定性を求める、違和感が気になる 短期使用推奨
シート フィルム状 持ち運びやすく、使用後の残りが少ない 初心者、外出先、携帯性に優れる 短期使用推奨
クッション ゴム状 水に溶けない、隙間が広い場合や痛みに 隙間が大きい、痛みがある、長時間の安定性 長期使用は特に注意

デメリットも隠さず解説!入れ歯安定剤の長期使用はなぜ危険なのか!?

入れ歯安定剤は、正しくお使い頂ければとても便利なものですが、安易に長期間使用するのは危険です。歯科医師は、ぴったりと合った入れ歯であれば安定剤は必要ないと考えており、安定剤の長期使用には否定的な見解を持つことが多いです。

Q: では、なぜ長期的な使用は避けるべきなのでしょうか?

長期使用の3つの大きなリスク

入れ歯安定剤を長期的に使い続けることによって、口腔内だけでなく、全身の健康にも影響を与える可能性があります。特に重要なリスクは以下の3点です。

1. 顎の骨が痩せてしまう(骨量の減少)という点です

合わない入れ歯を安定剤でごまかして使い続けると、入れ歯と歯茎の間に不均等な圧力がかかり続けます。その結果、顎の骨(顎堤)に適切な刺激が伝わらず骨量の減少を招いたり、逆に過剰な負担がかかることにより、顎の骨が痩せてしまうことがあります。

骨が痩せると、これまで使っていた入れ歯の調整をしても合わなくなってしまい、さらに新しい入れ歯を作っても、まず正しい噛み合わせに戻すまでのトレーニング期間を設けなければならない事態にもなりかねません。特に顎の骨量が減少すると、最終的には入れ歯が装着できなくなる可能性もあるため注意が必要です。

2. 噛み合わせ(咬合)が悪くなるという点です

入れ歯安定剤を大量に、あるいは不均一に使用すると、安定剤の厚みがバラバラになり、繊細なバランスで成り立っている噛み合わせが崩れてしまうケースがあります。

噛み合わせが悪くなると、一部の歯に過剰に負担がかかり歯が破損したり、筋肉のバランスが崩れることによる頭痛や肩こりといった全身への影響が出る可能性もあります。安定剤を使っている間は痛みがなく、よく噛めるため自覚症状はあまりないことが多いですが、いつの間にか噛み合わせが悪化してしまうことが多いでしょう。

3. 口腔内の衛生状態が悪化し、全身疾患のリスクが高まるという点です

入れ歯安定剤は粘着性が高いため、入れ歯や口の中にこびりつきやすく、その部分に汚れや細菌が付着しやすくなります

入れ歯安定剤の残留物が残ったままだと、細菌が増殖し、虫歯や歯周病、歯茎の炎症、カンジダ症のリスクが高まります。

最も深刻なリスクの一つが誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)です。誤嚥性肺炎とは、口の中の細菌が食べ物や唾液と一緒に誤って肺に侵入することで炎症を起こす病気で、特に高齢者の死因の上位を占めています。入れ歯に付着した細菌が主な原因と言われているため、入れ歯安定剤を付けたまま就寝するなど、不衛生な状態を続けることは非常に危険です。

さらに、一部の入れ歯安定剤には粘着力を高めるために亜鉛が配合されているものがあり、これを長期間使用し続けると、亜鉛の過剰摂取が原因で貧血や手足のしびれといった神経障害があらわれる可能性も報告されています。

正しい使い方で安全を確保!安定剤使用時の3つの重要ポイント!

これまで入れ歯安定剤の種類と特徴、そして長期使用のリスクについて説明してきましたが、次は、あなたが安定剤を安全に使うための重要なポイントを見ていきましょう。

入れ歯安定剤は、歯科医院に行けない間の応急的な対処法として非常に便利です。正しくお使い頂ければ、快適な装着感を一時的に取り戻せるでしょう。

ポイント1:長期間の使用は控えましょう!

入れ歯安定剤はあくまで「応急処置」と捉えることが最も大切です。

  • 長期間使い続けるのはおすすめしません!
  • 入れ歯が合わない、ガタつくのは、入れ歯や歯茎・粘膜に変化が起こっているということです。

もし入れ歯に不具合を感じたら、安定剤でごまかし続けるのではなく、できるだけ早く歯科医師に相談し、入れ歯の調整や再製作を検討することが推奨されます。

ポイント2:就寝時には必ず外しましょう!

Q: 毎日入れ歯安定剤を外してから寝るって本当ですか?

A: はい、就寝時には必ず入れ歯安定剤を剥がす必要があります!

就寝中は、歯茎を休ませるためにも入れ歯を外すことが推奨されます。もし就寝時にも入れ歯を装着される方でも、安定剤を付けたままの状態でお休みになるのは避けて下さい

時間が経つと安定剤が溶け出し、それが喉の方に流れていくと、窒息や誤嚥性肺炎を招く恐れがあります。就寝時は必ず入れ歯安定剤を除去し、入れ歯洗浄剤につけて清潔な状態を保つことが、あなたの命を守る上で必須の行動と言えるでしょう。

ポイント3:適量を守り、徹底的に洗浄しましょう!

入れ歯安定剤は、使用量が多すぎると、かえって入れ歯が不安定になったり、はみ出して痛みにつながったりします。

特に重要なのは、使用後の洗浄です。

  • 入れ歯に安定剤が残っていると、細菌が繁殖しやすい環境を作ってしまいます
  • 入れ歯の表面がツルツルになるまで、義歯ブラシ(入れ歯専用ブラシ)を使用してきれいに洗い流すことが大切です。
  • 洗浄の際に熱湯を使ってしまうと、熱によって入れ歯が変形してしまうので、必ずぬるま湯で洗いましょう。
  • 義歯ブラシ(機械的清掃)と入れ歯洗浄剤(化学的清掃)を併用するのが理想的です。

実例:入れ歯安定剤が使用できない入れ歯

やわらかいシリコーン樹脂で加工されている入れ歯には、入れ歯安定剤をお使い頂けません。安定剤を剥がす際にシリコーンが剥がれてしまったり、安定剤がくっついて取り切れなくなってしまうことがあるためです。また、クッションタイプの中には金属を用いた入れ歯に使用できない性質の材料もあります。

まとめ:安定剤に頼らず、快適な入れ歯生活を目指しましょう!

入れ歯安定剤には、食事や会話の際の不快感を一時的に和らげ、快適な装着感をサポートしてくれる大きなメリットがあります。クリームタイプ、粉末タイプ、クッションタイプ、シートタイプと、それぞれに特徴と適切な使用方法がありますので、あなたが入れ歯安定剤を検討している方は、ご自身の症状やライフスタイルに合わせて選ぶことが重要です。

最も注目すべきは、入れ歯安定剤はあくまでも「応急処置」であり、長期的な使用は顎の骨の吸収や噛み合わせの悪化、誤嚥性肺炎のリスクを高める原因となるという点です。

もし、入れ歯に不具合や違和感を覚えたら、「歳のせいだ」と諦めずに、まずは歯科医院で不具合の原因が何かを診てもらうことが重要です。

定期的に検診を受けて頂くと安心です。専門家の目で定期的にお口の状態と入れ歯の状態をチェックし、適切な調整を行うことが、いつまでも美味しく安全に食べるための秘訣です。

この記事の監修

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八幡 智裕(やはた ともひろ)

当院は、平成10年10月、姫路市勝原区や網干区、太子町の患者様が多い歯科医院です。おかげさまで開院当初から、たくさんの患者様にご来院いただいています。「第一に患者様のことを考えた治療を行うこと」を何より大切にしており、患者さんとの相互理解を重要視し、患者様にご満足いただけるよう医院作りに努めています。

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